• お客様の事例

    ウシオライティング株式会社:ハイエンドGPU搭載ワークステーションによる多面立体VRシステム導入事例

    • 3枚のハイエンドGPUを搭載できる高性能なワークステーションを導入 最新の映像テクノロジーに対応した多面立体VRのデモ環境を構築

    • ビジネス課題

      ウシオライティング株式会社(以下、ウシオライティング)では多面体VRのデモを顧客が体験できるショールームを設置しているが、複数のプロジェクターを用いて3面(正面、床面、側面)のスクリーンに映像を投影するため、アプリケーションを稼働させるデバイスに高い性能が必要とされていた。Unreal Engineなどを用いたリアルなビジュアル表現をスムーズに映し出せる環境を構築したいと考えていた。

    • 導入効果

      • Unreal Engineを用いたリアルなビジュアル表現を駆使したVRのデモが可能に
      • 導入以来ワークステーションに不具合はなく、安定した運用を実現
      • オンサイト保守があるため、万が一の不具合の際にも安心できる環境を構築
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        「ワークステーションのリプレースに際して、複数社からを提案していただきましたが、当時1台でハイエンドGPUを3枚以上搭載できるのは、Dell Precisionワークステーションしかありませんでした。ビジネス用途を想定したラインアップが豊富であることも良さの1つだと感じています」

        ウシオライティング株式会社
        映像照明事業部
        施工・フィールドサポート部
        技術メンテナンス課 技師/上級バーチャルリアリティー技術者
        橘内 伸太郎氏

      • ウシオライティング株式会社
        映像照明事業部
        施工・フィールドサポート部
        技術メンテナンス課
        技師/上級バーチャルリアリティー技術者
        橘内 伸太郎氏

    • 「未来は光でおもしろくなる」をスローガンに光関連の製品・サービスを幅広く提供

      ランプやレーザーなどの産業用光源をはじめとするさまざまな光製品を提供しているウシオ電機株式会社を中核とするウシオグループ。その中で、「未来は光でおもしろくなる」をグループスローガンに掲げ、照明・照明ソリューション、プロフェッショナルライティング、産業機器という3領域で多様なサービスを展開しているのがウシオライティングである。

      ライブやスポーツ観戦などのエンタテインメント業界から、商業施設やホテルの照明、医療業界、農業まで、光をテーマに事業を展開する同社。その中でも近年ニーズが高まっているのが、VR関連製品である。同社映像照明事業部施工・フィールドサポート部技術メンテナンス課技師の橘内伸太郎氏は、同社のVRソリューションについてこう説明する。

      「“五感を再現する”という考えに基づくVRは、音響、匂い、味、手触りなどさまざまな研究が進んでいますが、光をテーマにするウシオライティングでは、研究機関向け・産業向けに視覚のVRソリューションを提供しています。VRはヘッドマウントディスプレイ(HMD)をつけるイメージもあるかもしれませんが、当社ではプロジェクターに映像を投影する多面立体型のVRシステムを提供しています」

    • 3DメガネをかけるだけでVR環境に没入できる多面立体VRシステム

      ウシオライティングでは、2005年から国内において、多面立体VRシステム「HoloStage(ホロステージ)」を提供している。このシステムは、利用者はHMDを装着せず代わりに3Dメガネをかけることで、複数のプロジェクターから投影された映像を立体視でき、VR環境ならではの深い没入感を得られるというものだ。

      「コロナ禍を経て、衛生面から清掃しやすい3Dメガネを使える点を評価いただいています。さらに、多面立体VRシステムであるHoloStageはHMDと組み合わせて運用される企業も多いです。例えば、製品開発の際、デザイン担当者はHMD上でデザインを確認しながら作業を進め、決裁権を持つ方のデザイン確認には、リアルな実寸のイメージで体感できるHoloStageを使って行うといったケースもあります」(橘内氏)

      HoloStageは、発売当初は大学などの研究機関で主に活用され、その後自動車業界をはじめとした産業分野でも導入が広がってきた。幅広い業界で活用される中、導入実績として公開されているのが、国土交通省国土技術政策総合研究所が取り組む「インフラ分野のDX推進」分野だ。VRにてインフラ構造物、道路交通をはじめとするCIMモデルを立体で可視化し、設計、施工と維持管理に関する実験、技術開発や検証などをリアルな環境下で行うことが可能となっている。

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        「保守・メンテナンスのしやすさも考慮してショールーム用のワークステーションを選定しました。
        今後、経年劣化により不具合などが発生する可能性はありますが、オンサイト保守がついていることが安心感につながっています」

        ウシオライティング株式会社
        映像照明事業部
        施工・フィールドサポート部
        技術メンテナンス課 技師/上級バーチャルリアリティー技術者
        橘内 伸太郎氏

    • 自動車業界にてクレーモデルの代替としても活用

      その他にも、自動車業界でも設計開発段階におけるクレーモデル(粘土模型)をデジタルモックアップとして映像化してVR環境で確認しながら作業を進める目的でHoloStageが活用されている。

      「作成したクレーモデルを確認して、修正のために再度クレーモデルを作り直して確認する場合は、制作期間もコストも高くなります。クレーモデルのデータを取り込み、HoloStageが生み出す1/1スケールのVR空間で検証することで、開発工数を減らすことが可能です。設計開発スピードの向上と、クレーモデル作成のコスト面から、多数の自動車メーカー様に導入いただいています」(橘内氏)

      モノをデザイン・開発して検証するという製品であれば、この技術は自動車に限らずさまざまな業界でメリットがある。一般的なHMDと異なるのは、映像を映し出したVR空間に没入しながら、実際手に持っている工具なども合わせて見ることができる点だ。

      「さらに、2人同時にVR空間に入ることができ、相手の姿が見えるため、コミュニケーションしやすいことも多面立体VRシステムの強みです。HMD上の仮想空間でアバターに話しかけるのに抵抗がある方にも扱いやすいシステムです」(橘内氏)

    • ワークステーション1台に3枚のハイエンドGPUを搭載できることが決め手に

      ウシオライティングの東京本社には、このような多面立体VRシステムのデモンストレーションを行うショールームが常設されている。3面(正面、床面、側面)のスクリーンに対して、3台のプロジェクターで映像を投影するシステム構成だ。

      「VRは体験しないと分からないものですので、実際にショールームへ来ていただいてVRを体感していただいています。『HMDでVRを見たことがあるから』と興味を示さなかったお客様も、実際にHoloStageを使っていただくと『周囲が見えるのでVR世界に入りやすい』と言っていただけることも多いです」(橘内氏)

      実際のシステム構築ではパートナーのソフトウェア会社と協力しつつ、顧客がすでに有している自動車や建築などのCADデータとソフトウェア環境でVRのデモを行える点もメリットとなっている。

      一方、日進月歩でテクノロジーが進化していく中、よりリッチなビジュアル表現による3DデータをVRシステム内で確認したいというニーズも高まってきたという。それに伴い、ウシオライティングでもUnreal Engineを用いて作成したVR映像を扱うようになっていた。しかし、そのなかで顕在化したのが、マシンの性能問題だ。

      「ショールームは2020年に有明事業所から八丁堀の本社に移設しましたが、当時のワークステーションではパフォーマンスが足りず、Unreal Engineを用いたVR映像が動かないという課題がありました。こうした背景があり、ワークステーションのリプレースを検討開始しました」と、橘内氏は当時を振り返る。

      ワークステーション選定時に第一条件としたのが、RTコアを積んでいるGPUを搭載できることだ。移設時のワークステーションは複数枚のNVIDIA Quadro M6000を積んでいたが、リプレースする際にはQuadro Sync2に対応したNVIDIA RTX A6000を搭載できるワークステーションを選定していった。ウシオライティングでは、アプリケーションによっては3スクリーンにワークステーション1台で映像を投影するケースもあるため、1台にハイエンドGPUを3枚以上搭載できることも条件であった。

      「複数社からワークステーションを提案していただきましたが、当時1台でハイエンドGPUを3枚以上搭載できるのはDell Precisionワークステーションしかありませんでした。他社からは、2台のワークステーションを接続して構成するという提案もいただきましたが、同期を取るのが難しく、エラーの対処など運用で不安な面もあったのでDell Precisionワークステーションを選定しました」(橘内氏)

    • 3Dメガネを通して見えるHoloStageによるVRシステムの映像。自分自身の体で没入できることでHMD方式のVRよりも実寸イメージを得られやすいのが特徴だ。

    • Unreal Engineを活用したリッチなVRコンテンツも表示可能に

      こうしてウシオライティングはDell Precision7920を4台導入し、現在ショールームでフル活用されている。橘内氏は導入の感想を以下のように話す。

      「ハイエンドGPUを搭載したDell Precisionワークステーションへのリプレースにより、光の照射状況などを含むリアルタイムトレースができるようになったことや、Unreal Engineを用いたコンテンツにも対応できるようになった点は成果だと感じています。ワークステーション1台でVRを投影する場合も問題なく稼働しています。今までパフォーマンス不足でできなかったことをデモ設備でテストできるようになったことは、次の提案につなげる意味でも大きな変化です」

      ウシオライティングのHoloStageは色の再現性が高いことも特長だというが、その点でもDell Precisionワークステーションが貢献している部分もある。

      「特にデザイン部門の方は、VR環境でも色の再現性や写実的な表現ができるか否かを重視されていると思います。そうした中でHoloStageの強みを活かす表現という面で、現在のDell Precisionワークステーションを用いた構成には満足しています」(橘内氏)

      顧客企業の条件に合わせて、さまざまなシステム構成を採用できるのもHoloStageの強みである。そのためDell Precision7920を推奨マシンとする一方、動作環境や費用感に合わせてDell Precisionシリーズから他の機種を組み合わせることも可能だ。

      顧客をオフィスに招いてVRのデモンストレーションをするという局面では、デバイスの安定性も重要となる。その点に関して、導入以来不具合が出ていないことに橘内氏は満足を示している。

      「選定する際、複数のワークステーションを組み合わせるのではなく、1台で3つのGPUを搭載できる条件にこだわったのは、保守・メンテナンスをシンプルにして手間を削減したいと考えたことも理由の1つです。今後、経年劣化により不具合などが発生する可能性もありますが、オンサイト保守がついているので安心感につながっています」

    • 今後も産業分野におけるVRの可能性にチャレンジしていきたい

      公的機関や研究施設、自動車業界、建築業界など、幅広い分野で活用が広がるHoloStage。

      ショールームのワークステーション刷新を受けて、橘内氏は今後の展望を以下のように語る。

      「HMDやプロジェクターというツールの枠を超えて、より現場でVRやXRが活用されていく世の中になっていくことで、ビジネスの幅も広がっていくと考えています。そうした意味でも、HoloStageの強みである、投影された大きなVR空間で自由に動けることは価値あるものだと自負しています。産業分野を軸に今後もVRの可能性を探っていきたいです」

      VRの新たな可能性に挑み続けるために、システムの安定稼働を支えるワークステーションの進化は欠かせないものとなっていく。

      「デル・テクノロジーズのようなパートナー企業との協力はもちろんですが、VRを体験して終わりではなく、多くの皆様とともに、VRで新たな体験やソリューションを生み出していきたいと考えています。『アイデアはあるけれどVRの技術がない』という企業様とも、ぜひ一緒にビジネスを生み出していきたいと考えています」

    • ワークステーション1台で3台のプロジェクターへ映像出力する際の構成。この例ではアプリケーション側で2人分の両目用の映像を生成し、プロジェクター側で4チャンネル分の時分割映像として合成した上で出力している

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    • お客様名 : ウシオライティング株式会社

      業種 : 製造業

      場所 : 日本/東京