IT人材が不足しているため定型業務は外部に出すべし
――中小企業の情報システム部門の問題を教えてください。
エンジニアリングマネージメント
久松 剛氏
久松氏: 多くの中小企業は、「社内でPCに詳しい人が持ち回りで情報システムを担当する」のが一般的でした。その名残で、専任の情シスがいない、あるいはその位置付けがあいまいな企業が多いと言えます。
IT環境をより良くしようと思ったときに、人材をどうやって確保するのかが課題になっています。情シスをエキスパートに育成するのか、それとも外部から採ってくるのか。育成はそれなりの土壌がないとできません。かといって人手不足が深刻化している昨今、中途採用も簡単ではありません。
自社の課題感にマッチした、実績あるIT人材を採用したいところです。しかし、これはほとんどの会社ができていないのが現状です。
――人材面での課題が大きいということですね。業務上の課題はありますか。
久松氏: それは会社によってさまざまです。よくあるのは、IT環境の運用や保守業務が属人化してしまい、現任者が辞めてしまうと他の人ではシステムの状態を把握することができないという課題です。私が最初に情シス部長を務めた会社でもそうでした。私が退職しようとしたときに後任が見つからず、システムエンジニアリングサービス会社に業務を外注しようとしたら月額280万円もの見積もりが出てきた……ということがありました。
情シスの業務が複雑かつ多岐にわたる中で、定型的な業務はできるだけマニュアル化して他人に任せられるようにしたり積極的にアウトソースしたりといった工夫が必要です。そうすれば担当者が退職したときの混乱を最小限に抑えられます。PCの運用などは、定型化しやすく外部に投げやすい業務の一つと言えます。
キッティング作業に“やりがい”を見出してしまう情シス
――お話に挙がったPC運用に関してはどのような課題があるのでしょうか。
久松氏: PCのキッティングやライセンス管理に手間がかかるという課題がありますね。特にソフトウェアライセンスの管理は面倒です。中小企業の中には「Active Directory」の運用をまともにやっていないという事例もよく見られます。業務用にもかかわらず、価格が安いという理由で「Windows Pro」ではなく「Windows Home」ライセンスを選んでしまい、Active Directoryで管理できないというケースも見ました。これは特に小規模な企業の“あるある”ですね。
――PC運用に関して久松さんがこれまでに経験したトラブルを教えてください。
久松氏: 私が過去に在籍していた企業では、新入社員が入ってくる4月に100~200台のPCをキッティングする作業が毎年発生していました。この作業負荷を自動化ツールで軽減しようとしたところ、担当者に抵抗されました。
その担当者はキッティング作業にやりがいを感じていたからです。特別なスキルは不要で流れ作業のようにできるPCのキッティングは、数をこなすことによって成果が目に見えて達成感を得られる。だから自動化せずに手作業でやりたいと主張したわけです。本来の情シスがやるべきことではないと思います。
――テレワークが浸透する中で浮かび上がってきたPC運用の課題はありますか。
コロナ禍のテレワーク下で、担当者の自宅にPCを送ってそこでキッティングしたという話をよく聞きしました。その際、問題になりがちな要素が「保険」でした。PCを数台まとめて送ろうとすると補償金額が30万円を超えてしまい、宅配便業者が引き受けてくれないのです。仕方なく出社を許可されている人が車で運んだり、複数回に分けて送ったりといった対応をしたそうです。数台ならそれでもいいかもしれませんが、数十台、数百台になると無理な話ですよね。
キッティングを担当する従業員の自宅からユーザーの自宅にPCを送るといった業務フローには、情シスが従業員の個人情報を知らなければならないという観点でリスクがあります。それらを踏まえると、PCのキッティングや配送はアウトソースしてもいいのではないかと思います。
カスタマイズや配送の問題もクリアするPC運用アウトソーシング
――PC関連業務のさまざまな課題への対策として、デル・テクノロジーズは「ゼロタッチPC」を提供しています。
久松氏: ゼロタッチPCは、PCの調達から初期キッティング、ユーザーへの配送、運用、故障対応、廃棄などをまとめてアウトソースできるので有効と言えるでしょう。
社内が細分化されておりチームごとに細かくカスタマイズしてPCを提供している企業は、アウトソースに不安を感じるかもしれません。その場合はカスタマイズの度合いを減らし、大きなグループごとに要件を定めてアウトソースできる範囲でカスタマイズしたPCを利用すれば問題は回避できるでしょう。
――PCのキッティングだけでなく、日々の運用をアウトソースすることでどのようなメリットが得られますか。
久松氏: いろいろありますが、特に故障時の対応が楽になります。PCが壊れた・調子が悪いときに、代替PCを一からキッティングしていたら、それなりの時間がかかります。故障したPCを回収して原因を探り、メーカーのサポート窓口とやりとりをして……といった作業も発生します。これらをアウトソースすればPC運用にかかる面倒な業務を一掃できます。
私が過去に情シス部長を務めた会社は、従業員のバックグラウンドもITリテラシーもさまざまで、PCの電源の入れ方を教えることもありました。情シスには「PCが故障した」「調子が悪い」といった内線電話がよくかかってきました。
そうしたユーザーはたいてい急いでいて不機嫌です。社内の担当者相手なので、遠慮ない物言いになることもあります。そんな電話への対応をストレスに感じて、「もう辞めたい」と漏らす情シス担当者もいました。
ゼロタッチPCなら、故障時などに予備機を即納してもらえます。速やかに予備機を差し出せば、情シス担当者は余計なストレスを抱えないで済みますね。
定型業務をアウトソースする際の稟議のコツ
――情シスがPC運用をアウトソースするハードルを教えてください。
久松氏: 社長など決裁者への稟議(りんぎ)を通し、予算を確保することです。情シスのコストと時間の使い方にあまり興味がないという社長が多いのは事実です。そんな社長に「PC運用をアウトソースしたい」とそのまま伝えても、理解を得るのは難しいでしょう。
――では稟議を通すコツはありますか?
久松氏: 稟議申請の際は、効果を明確に示す必要があります。「以前までPC運用にかかっていた工数は何時間で、時給換算すると何万円分だった。ゼロタッチPCを導入することでこれらの工数が減り、何万円分のコストを削減できる」といった効果を明確に示すことが大事です。
コスト削減効果ばかりをアピールしないことも大切です。IT環境のコストはいくらでも削減できるというイメージを持たれてしまい、最終的には情シスそのものの立場も危うくなってしまいます。
「浮いたコストを使って別の業務効率化ソリューションの導入検証をしたい」「社内向け業務効率化ツールを作成したい」という表現で、将来につながる提案もする必要があります。新しい取り組みの効果をできるだけ具体的に示すといいでしょう。
――コスト削減策と、新たな付加価値を生み出す施策をセットで提案するのですね。
久松氏: そうです。ソリューションの導入に限らず、システム間連携を強化してより使いやすいIT環境にするとか、資産管理システムを入れて上場対策をするとか、新たな取り組みにもいろいろなアプローチがあります。漠然と「DXを推進します」でもいいかもしれませんが、具体的な提案を示した方が経営者の理解を得やすいはずです。
いずれにしても、PC運用のような淡々とこなす業務ではなく、よりクリエイティブな、企業の競争力向上につながる施策を提案できるといいですね。
――PC運用に困っている情シス担当者にメッセージをお願いします。
久松氏: 情シスは人事評価が難しいポジションです。与えられた業務だけに取り組んでいると、5段階評価の3にしかならないし、場合によって2を付けられてしまうこともあります。自分の評価を高めてより多くの給与をもらうには、限られた時間をより効率的に使うことが大事です。
PC運用のような非クリエイティブな業務は積極的にアウトソースして、空いた時間を有効に使って企画などのクリエイティブな業務に取り組み、それを経営層にアピールしていただきたいですね。そうすれば評価や給与だけでなくスキルも上がり、将来の自分のためになるはずです。
※本稿は、2024年1月25日に公開した記事を再掲載したものです。
ゼロタッチPCで得られる3つの「ゼロ」
お客さま専用オンラインからトータルサービスを、一括または月額で即納モデルの PC 1台から購入を完結
クラウドから自動でセットアップされるため、オフィスに出社して1台1台初期設定不要
予備機不要で、そのまま使える代替機を即手配。ユーザーの「今すぐ何とかして」にも対応
・ゼロタッチPCについてはこちら
・デル テクノロジーズ アドバイザーについてはこちら
・お問合わせ(電話・チャット)はこちら
この記事は TechTargetジャパン(https://techtarget.itmedia.co.jp)に2024年2月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://members.techtarget.itmedia.co.jp/tt/members/2402/19/news04.html/