AIソリューションを提供するHACARUSは、画像や音声などのデータ量が少なくても分析が可能な「スパースモデリング」と呼ばれる技術をAIに応用し、本当に役立つデジタルソリューションを提供しています。
スパースモデリングは、少量のデータで高精度の成果を得られることや、その結論に至った理由を解釈できること(XAI――Explainable AI/説明可能AIと呼ばれる)から、産業分野だけでなく医療分野にも適しており、HACARUSも東京大学大学院薬学系研究科(事例紹介)や京都大学ウイルス・再生医科学研究所(事例紹介)との共同研究を進めています。
本稿では、HACARUSならではの取り組みとして、AIを活用したデバイス開発や、化粧品開発における実験効率化の具体案をご紹介します。この記事を通じて、読者の皆さまがご自身の業務でAIを活用できる部分をイメージするヒントになれば幸いです。
ビッグデータなしで「説明可能なAI」を作る「スパースモデリング」
最初にスパースモデリングについて簡単にご紹介します。スパースモデリングは約25年の歴史を持つ技術で、始まりは諸説ありますがスタンフォード大学のRobert Tibshirani教授がLASSO(予測に重要な変数を抽出できる回帰分析の手法)を提唱したことによりデータサイエンス分野で広く認知されました。スパースモデリングの主な特徴は次の3つです。
1. ビッグデータ不要の技術
2. 「その結論に至った理由」を解釈できるAI
3. 高速かつ低消費電力。さまざまな実行環境に対応
スペックの低いハードウェアでのエッジAI実行やビッグデータの不足、結果の解釈性が重要になる場面ではディープラーニングは不向きとされており、そうした場合にスパースモデリングなど別の手法を検討する必要があります。データサイエンスに広く見識のあるHACARUSの強みはそのようなケースでも対処するアプローチをできることです。
犬の肉球から心電図データ解析 ハードウェアからAI開発まで一貫支援
エッジAI開発の事例として、DSファーマアニマルヘルスと共同で進めている動物の心電図データの測定・分析ツールが挙げられます。従来、犬の心電測定は動物を横向きに倒した状態で身体に電極をつけて行うため、犬への負担が大きいものでした。
そこで新たに動物の肉球から心電図データを取得する装置を開発し、HACARUSのAIを組み合わせることで、動物の心電図データを簡便かつ正確に取得して解析することが可能になりました。開発したデバイスで得た解析データをDSファーマアニマルヘルスの獣医療支援プラットフォーム「あにさぽ」に送信し、すぐに閲覧できるようにすることで手軽なヘルスチェックが可能です。
このような、エッジでのAI活用を検討したいがどこから着手してよいのか分からない、というケースに対してHACARUSでは「デバイス試作サービス for Edge AI」を提供しています。こちらはハードウェアからAI開発まで一貫して支援し、半年間(※部品調達のリードタイムにより期間は変わる可能性があります)でプロトタイプを開発するワンストップ支援型のサービスです。エッジAIをご検討の方はぜひ一度こちらから本サービス詳細をご覧ください。
化粧品開発のAI活用 膨大なデータ解析を自動化、研究者は考察に専念
スパースモデリング技術は最近話題のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)分野でも有効に活用できることが分かってきています。一例として、化粧品開発における実験の効率化の具体案をご紹介しましょう。
化粧品開発では、他の化学製品開発同様、既存処方の知見に基づきながら、素材・原料の選定と実験・試作品の作成、試作品の分析・検査を繰り返して最終的に目的の製剤に至ります。一見、全てデータ化可能な情報で、すでにデジタライゼーションされているように思えますが、実は大きく以下2点の課題が存在しています。
1. 実験条件の決定方法
2. 膨大な組み合わせからの実験の絞り込み
いずれも現在は実験結果や分析装置からのローデータを元に、研究者がこれまでの経験・勘で決定しています。本来、研究者は実験と考察に時間をかけて集中したいところですが、データの解析や次の実験の取捨選択といった工程にも時間を奪われています。
HACARUSはこの2点の課題に対して、データサイエンスのエキスパートとしての知見から、次の解決案を策定しました。
1. AIによる自動解析――マテリアルズ・インフォマティクスによる処方設計の最適化と、解釈性の高い設計を実現
2. AIによる実験条件の絞り込み・推薦――不要な実験条件を排除、優先度に基づく実験推薦
GC/MS、HPLCなどからのアウトプットデータをインプットとして、マテリアルズ・インフォマティクスの活用により各種評価指標を自動算出、併せて次に行うべき実験を優先度とともにリストアップします。検査装置からのアウトプットデータの解析にかけていた研究者の時間が解消され、実験結果の考察により時間をかけられるようになります。
また、これまでのデータを元にAIによって判定される優先度の高い実験から着手できることで、実験回数が減少し、薬物・分析機器にかかる費用の低減と、開発の効率化・短期化が望めます。
さらに重要なことは、作成したAIは、実験解析に利用される過程でデータの蓄積とともによりよいAIになり、発展が続いていくことです。作成されたAIの目的(アウトプット仕様)を明文化しておけば、同様の実験を行う別プロジェクトでも活用でき、組織全体としての実験効率化につながります。
AIで何をどう効率化できる? 業務フローの細分化で見えてくる
いかがでしたか? 今回は獣医師向けデバイス開発、化粧品開発の実験効率化という具体例を用いて、スパースモデリングの適用事例や、どういった作業工程でAIを活用することができるのかをご説明しました。
AI活用に漠然としたイメージしか抱けない方もまだまだ多いかと思いますが、業務フロー・作業工程を少し細分化してみることで、AIを使えば効率化を図れる作業部分を見つけられるかもしれません。デジタルデータ化された情報が手元にあっても、その分析・解析工程が全て従来の「人間の経験と勘」に依存していれば、デジタルの力を最大限活用できていない可能性があります。
HACARUSはスパースモデリング技術を中核に、さまざまなシーンでのAI利活用を実現しております。お悩みをお持ちの方やご興味頂きました方、ぜひ、Dell de AIおよびHACARUSにお気軽にお問い合わせください。
この記事は ITmedia NEWS(https://www.itmedia.co.jp/news/)に2021年11月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2111/18/news006.html