社会的な行動制限が徐々に解除されるにつれて、ビジネスパーソンの働き方は在宅勤務を含むリモートワークとオフィスワークを織り交ぜた「ハイブリッドワーク」にシフトしてきた。新しい働き方の基盤となるノートPCには、高い処理性能だけでなく、携行しやすさも期待される。
特に日本では、潜在的に取り回しの良いデバイスが愛されてきた傾向がある。ポータブルオーディオプレイヤーしかり、家庭用ゲーム機しかりだ。当然、ビジネスシーンに欠かせないノートPCもその影響を受けており、これまでも小さくて軽い機種は多く存在した。
ただ、以前のコンパクトなノートPCは、技術面における制約や課題もつきものだった。バッテリー駆動時間が極端に短かったり、キーボードが小さくて打ちづらかったり、衝撃に弱かったり……といったトレードオフ要素が頭をよぎる人は今でも少なくないだろう。
しかし、技術の進歩は目覚ましい。現在では高い処理パフォーマンス、長時間のバッテリー駆動、打ちやすいキーボードを備えながらも1kgを切る軽量ボディーを持つモバイルノートPCも出てくるようになった。
今回紹介するデル・テクノロジーズの「Latitude 7330 Ultralight」も、1kgを切るボディーに高い利便性を詰め込んだ今どきの軽量モバイルノートPC……なのだが、それだけではない魅力があるという。この記事では、Latitude 7330 Ultralightの“秘密”をひもといていきたい。
「軽い」だけでは不十分 ノートPC選びで重視すべきポイントとは?
急速にビジネスシーンのニーズが変化したこともあり、ここ数年はノートPCに求められることも徐々に変わってきている。モバイルノートPCであれば、単に「軽くて持ち運びやすい」ものを探すだけでは不十分だ。
例えば、どこにでも持ち運べる携行性を維持しつつ、画面の見やすさやボディーの丈夫さを兼ね備えた製品は増加傾向にあり、ある意味で“必要最低限”の基準になったといえる。加えて、ビデオ会議(Web会議)が広く普及したこともあり、昨今ではWebカメラの画質(画素数)やスピーカーとマイクの品質も考慮に入れる必要がある。
現代のビジネスシーンに求められる要素をしっかり網羅しているのか――この点のチェックは欠かせない。その上で購入しやすい価格感なのかどうかを見定めるべきだろう。
Latitude 7330 Ultralightのメリットをチェック!
これらの特徴を満たした選択肢の1つが、今回紹介するデル・テクノロジーズのモバイルノートPC「Latitude 7330 Ultralight」だ。2022年4月に発表されたばかりの新モデルで、同社がイチオシするモデルの1つである。最小構成の直販価格は26万7981円(税/送料込み、2022年6月現在)となる。
LatitudeシリーズのノートPCは、上位から順に「9000」「7000」「5000」「3000」の4シリーズが展開されている。Latitude 7330 Ultralightは、上から2番目の「Latitude 7330」の超軽量仕様という位置付けで、最軽量構成の重量は約967gとなる。デル・テクノロジーズが販売してきた法人向けノートPCとしては最も軽い。ボディーサイズは約306.5(幅)×199.95(奥行き)×16.96(厚さ)mmだ。本体を手で持ち上げてみるとしっとりと吸い付くような質感で、手になじみやすい。
価格を見ると「激安」とはいえないが、後述する仕様を考えると、コストパフォーマンスは良好といえる。
ボディーはマグネシウム合金製で、米国防総省が定める「MIL-STD-810H(MIL規格)」に定める耐衝撃/耐環境性能を備えている。過酷な環境でも使える丈夫さを備えているため、どこでも安心して使えるのは大きな強みだ。
ブルーライトカット機能を標準で備えた13.3型液晶ディスプレイを採用
ディスプレイは13.3型のフルHD(1920×1080ピクセル)液晶となる。映り込みの少ない非光沢パネルを採用しているので、ユーザーや照明の写り込みが気になることはない。ハードウェアベースのブルーライト軽減機能「ComfortView Plus」も備えているので、長時間画面を見た際にありがちな目の疲労を軽減できる。
薄型軽量ながら、キーボードはしっかりとストロークを感じられるものとなっている。オプションでLEDバックライトを選べば、航空機の機内など暗い場所でのキータイプも快適にこなせる。プログラミングに従事する場合に便利なことも多い米国英語(US)配列のキーボードも選択可能だ。
新旧のインタフェースをバランス良く備える
ポート類は、左側面にThunderbolt 4(USB4)端子とイヤフォン/マイクコンボ端子を、右側面にThunderbolt 4端子、USB 3.0 Type-A端子とHDMI 2.0出力端子とセキュリティロックポートを備えている。Thunderbolt 4端子はUSB PD(Power Delivery)による電源入力とDisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応する。
変換アダプターを使わなくても周辺機器を接続できる利便性の高さには注目したい。会社内はもちろん、社外でディスプレイやプロジェクターにつないでプレゼンテーションする際などに便利に使えるだろう。
軽量なモバイルノートPCでは処理パフォーマンスを犠牲にしているケースもあるが、その点においてLatitude 7330 Ultralightに妥協はない。
CPUは最新の第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)のUシリーズ(標準消費電力15W)を採用している。処理能力重視の「パフォーマンスコア(Pコア)」と低消費電力重視の「効率コア(Eコア)」のハイブリッド構成で、パフォーマンスの底上げを図りつつ消費電力の増加を抑制している。企業向けのセキュリティ/管理機能である「Intel vProプラットフォーム」に対応する構成も選択可能だ。
メインメモリは最大で16GBまで搭載可能で(増設/換装不可)、ストレージは最大512GB SSDを選択できる。写真のレタッチや軽い動画の編集など、最近はオフィスワークでもシステムに負荷の掛かる処理をする機会は少なくない。1kgを切るモバイルノートPCでも、そのような処理をこなせることは心強い。
Web会議向けの機能もバッチリ
Latitude 7330 Ultralightは、Web会議向けの仕様/機能についても抜かりない。
Webカメラの解像度は720p(HD/1280×720ピクセル)撮影に対応しており、物理的なカメラシャッターも備える。解像度は特筆するほど高くはないが、品質的には十分だ。
また、マイクで集音した声に対し、AI(人工知能)技術を活用して騒音を軽減する「Intelligent Audio」機能も備える。同機能は自分の声(マイクでの集音)だけでなく、相手の声(スピーカーに出力される音声)にも適用できることが特徴だ。自分も相手も、快適な音声でWeb会議に臨めることはうれしいところである。
Web会議というと、通信のスピードも品質を左右する要素となる。その点、Latitude 7330 Ultralightは最新の無線LAN規格「Wi-Fi 6E」にも対応している。Wi-Fi 6EまたはWi-Fi 6に対応するWi-Fiアクセスポイント(ルーター)を使っている場合は、より安定した通信を期待できる。
さらに、Latitude 7330 Ultralightでは「ExpressConnect」という機能が使えることも知っておきたい。これは、「Dell Optimizer」と呼ばれる内蔵型AIをベースにした最適化ソフトウェアに含まれるネットワーク機能で、Web会議で利用するアプリの通信を優先させるといった処理が可能になる。
Wi-Fi 6Eについて
「Wi-Fi 6E」は、2.4GHz/5GHz帯に加えて6GHz帯での通信にも対応するIEEE 802.11ax規格の無線LANの愛称です。
2022年6月現在、法令が未整備のため日本では6GHz帯での通信は利用できません。法令の整備が完了次第、ソフトウェアの更新で対応する予定です。
サステナビリティーへの配慮も抜かりなし
ビジネスシーンでの採用を前提に考えると、これまで述べてきたPCの性能や機能以外に、「サステナビリティー(持続可能性)」への配慮も重要となる。サステナビリティーへの取り組みは、廃棄物の削減を始めとして企業として得られるメリットが少なくない。もちろん、企業価値の向上にも資する。
デル・テクノロジーズは、製品のサステナビリティーの向上に長年取り組んでいる。Latitude 7330 Ultralightも例外ではなく、主に以下のような取り組みを行っている。
- ボディーの染色に100%水性の塗料を使用
- バッテリーフレームに最大50%のリサイクルプラスチックを利用
- 下部ゴム足に植物バイオプラスチック素材を最大39%利用
- 運搬用の梱包(こんぽう)におけるプラスチック/ケーブルラップの撤廃
Latitude 7330 Ultralightは、消費電力に関する「国際エネルギースタープログラム(ENERGY STAR)」、IT機器の持続可能性における認証制度である「TCO認証(TCO Certified)」、米国における電子機器類の環境配慮度合いを評価する認証制度「EPEAT」といったサステナビリティーに関わる認証も高いレベルでクリアしている。
繰り返しにはなるが、こうした認証に対応していることは、法人として製品を選ぶ上でも強く背中を押してくれる要素になるはずだ。
ベンチマークテストで実力をチェック!
軽量で持ち運びやすく、環境への配慮もしっかりとしているLatitude 7330 Ultralightだが、ビジネスシーンで利用するノートPCとしての性能はいかほどのものか、ベンチマークテストを通して検証してみよう。今回検証するマシンの主な仕様は以下の通りだ。
- CPU:Core i5-1235U
- Pコア2基4スレッド/最大4.4GHz
- Eコア8基8スレッド/最大3.3GHz
- メインメモリ:8GB
- グラフィックス(GPU):Intel Xe Graphics(実行ユニットは80基)
- ストレージ:256GB SSD(PCI Express接続)
- OS:Windows 10 Pro 64bit版(Windows 11 Proからのダウングレード)
CINEBENCH R23
まず、3Dレンダリングを通してCPUコアの性能をテストする「CINEBENCH R23」のスコアをチェックしてみよう。ACアダプターをつないだ状態で電源モードを「高パフォーマンス」(標準)にした場合のスコアは以下の通りだ。
- マルチコア:5832ポイント
- シングルコア:1547ポイント
マルチコアの結果は、8基搭載されたEコアによって効果的に引き上げられており、ひと昔前のモバイルノートPCでは考えられないような好成績を記録している。一方、シングルコアの結果は、Pコアの“底力”を感じさせるもので、これも従来のモバイルノートPCと比べると良好な値である。
今回はWindows 10 Pro 64bit版でテストしているが、第12世代Coreプロセッサへの最適化がより進んでいる「Windows 11」をインストールした構成なら、特にマルチコアのパフォーマンスにおいてさらに良い結果をもたらすことになるだろう。
PCMark 10
続いて、PCの実利用シーンを想定したベンチマークテストアプリ「PCMark 10」の結果を見てみよう。こちらも、ACアダプターをつないだ状態で電源モードを高パフォーマンスにした場合のスコアをチェックする(以下、他のテストも同様)。
- 総合スコア:5064ポイント
- Essentials(日常利用):1万269ポイント
- アプリ起動:1万4016ポイント
- ビデオ会議:8186ポイント
- Webブラウズ:9440ポイント
- Productivity(オフィス利用):6976ポイント
- 表計算:6720ポイント
- ワープロ:7243ポイント
- Digital Content Creation(デジタルコンテンツ作成):4921ポイント
- 写真編集:8954ポイント
- レンダリング/ビジュアライズ:3027ポイント
- 動画編集:4397ポイント
こちらも、以前のモバイルノートPCと比べると良好なスコアといえる。特に、CPUに統合されたGPU(Intel Iris Xe Graphics)の性能向上も手伝ってデジタルコンテンツ作成のパフォーマンスは改善度合いが大きい。
最近は、ビジネスシーンでも写真/動画の編集をする機会も増えつつある。そのようなシーンでも、そこそこのパフォーマンスで作業できることは、仕事の効率改善に寄与するはずだ。
一般的なオフィスワークを想定したProductivityのスコアも良好である。これなら、オフィスアプリもサクサク動いて快適だろう。
CrystalDiskMark 8.0.4
SSDがデータを読み書きするパフォーマンスをチェックすべく、「CrystalDiskMark 8.0.4」によるテストも実施した。
今回テストしたマシンには、KIOXIA(キオクシア)の「KBG40ZNS256G」というSSDが搭載されていた。公称のシーケンシャル(連続)読み出しは最大毎秒2200MB、シーケンシャル書き出しは最大毎秒1400MBというスペックである。結果は以下の通りとなった。
- シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)
- 読み出し:毎秒2287.37MB
- 書き込み:毎秒1577.76MB
- ランダム(RND4K Q32T1)
- 読み出し:毎秒402.78MB
- 書き込み:毎秒335.16MB
シーケンシャルの読み書きは、公称スペックを少し上回る結果となった。きちんとSSDの性能を引き出せているようである。ランダムの読み書きについても、細かい(小さな)ファイルを断続的に読み書きするようなことをしない限りは十分なパフォーマンスを備えている。
3DMark
3Dグラフィックス性能をチェックする「3DMark」の結果もチェックしよう。今回はDirectX 12ベースの「Time Spy」と、DirectX 11ベースの「Fire Strike」の2種類を計測した。結果は以下の通りだ。
- Time Spy:1242ポイント
- Fire Strike:2938ポイント
過去のモバイル向け省電力CPUに統合されたGPUと比べるとパフォーマンスが良いことは間違いなく、3D関連のグラフィックス性能も良好だ。これなら、余暇のカジュアルなシーンで負荷の軽いゲームタイトルを十分にプレイできる。
FF14ベンチマーク
「軽いゲームならできるって本当?」と疑問を抱く人もいると思うので、実際のゲームをベースとしたテストアプリ「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」も実行してみた。今回はノートPC向けの「標準品質」と「高品質」設定でフルHD/フルスクリーン描画でテストを行った。結果は以下の通りだ。
- 標準品質(ノートPC):4033(普通)
- 高品質(ノートPC):3153(設定変更を推奨)
さすがに高品質では厳しいものの、標準品質ならそこそこの快適さでプレイできる。ノートPCのCPU内蔵GPUをターゲットにした設計の3Dゲームなら、今までよりもスムーズに動くことは間違いなさそうである。
このように、Latitude 7330 Ultralightはあらゆる面でスキのない、堅実な製品に仕上がっている。抜群の軽さと頑丈さを兼ね備えつつ価格と性能のバランス感も妥当で、ハイブリッドワーク環境下のビジネスシーンで複数台を導入する際には、非常に魅力的な選択肢だといえる。
ノートPCの導入について検討する際には、ぜひ第1候補として心に留めておきたい。
この記事は ITmedia PC USER (https://www.itmedia.co.jp/pcuser/)に2022年6月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2206/27/news004.html