企業ITに想像的破壊をもたらす「APEX」の衝撃 オンプレの「サービス化」がもたらす5つの革新的なメリットとは?

オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドが広がりをみせている。しかし現状のハイブリッドクラウドの多くは、オンプレミスとクラウドの併用状態にすぎず、いわば“ダブルスタンダード”になっている。このため管理負担が膨大となり、多くのIT部門が悲鳴をあげている。特にオンプレミスについては、パブリッククラウドに比べ、ITリソースの調達の初期コストや時間がかかり、最適化された運用も難しい。このような状況を根本から解決するため、2021年5月にデル・テクノロジーズが発表したのが「APEX」である。ここではその内容と、APEXが企業ITにもたらすメリットについて考えてみたい。

企業ITのハイブリッド化で顕在化したオンプレミスの課題

Dell Technologies
SVP, Global Sales
Storage, Platforms & Solutions |
APEX Acceleration
Kyle Leciejewski氏

企業システムでは既に一般的になった、パブリッククラウドの活用。今後デジタル変革(DX)が進んでいけば、その利用はさらに広がっていくことになるはずだ。

もちろんすべてのシステムがパブリッククラウドに移行するわけではない。個人情報や取引先の情報、設計情報などの機密性の高いデータを扱うデータベースやアプリケーションは、今後もオンプレミスシステムで運用されるはずだ。また定常的な負荷がかかるシステムの場合には、オンプレミスシステムの方がパブリッククラウドよりも、運用コストやトータルコストが安価になるという事情もある。

つまり企業システムはこれからも、ハイブリッドクラウドとして運用される可能性が極めて高いわけだ。

ここで多くのIT管理者が直面するのが、オンプレミスシステムとパブリッククラウドとの間にある、「リソース調達や運用面でのギャップ」である。パブリッククラウドはリソース調達を短時間で行うことができ、料金も使った分だけ払えばいい。またリソース利用状況を集中管理できる管理コンソールが提供されているため、運用も容易だ。これに比べてオンプレミスシステムは、リソース調達に時間と初期コストがかかり、運用の手間も大きい。このような状況に悩んでいるIT管理者も多いはずだ。

こうした課題を解消する有効なアプローチとして注目されているのが、デル・テクノロジーズが2021年5月に発表した「Dell Technologies APEX」(以下、APEX)だ。

「アナリストの調査によれば世界のITインフラはハイブリッドクラウドへと向かっており、これに伴いサービス化のニーズも高まっています。APEXはこうしたニーズに対応するもの。シンプルさや俊敏さ、制御性が高まり、ITスタッフの負荷軽減が実現できます」と説明するのは、デル・テクノロジーズでグローバルセールス担当SVP(シニア・バイス・プレジデント)を務めるKyle Leciejewski氏だ。

APEXは、大きく5つの領域にまたがっている。顧客がITリソースを集中管理できる「APEX Console」、ITインフラをサービス化する「APEX Infrastructure Services」、ハイブリッドクラウドでのワークロード配置を最適化できる「APEX Cloud Services」、顧客固有の課題を解決するための「APEX Custom Solutions」、そして主要パートナーと連携した「APEX Partnership」だ(図1)。

大きく5つの領域にまたがるDell Technologies APEX。こうした網羅性の高さは、オンプレミスのサービス化に対する、同社の本気度を感じさせる

Leciejewski氏はこの中でも、特に注目して欲しいポイントが3つあると語る。

オンプレのサービス化がもたらす5つの変化

1つ目は「APEX Infrastructure Services」に含まれる「APEX Data Storage Services」だ。これは、デル・テクノロジーズが所有・管理するエンタープライズクラスのストレージインフラを、顧客のオンプレミスやコロケーションデータセンターに配置し、“as a Service型”のマネージド・サービスとして提供するもの。顧客はコンソールを使い、ストレージで使用するデータタイプや求めるパフォーマンス、容量などを指定するだけで、必要なストレージサービスを最短14日で利用開始できる(米国に於いて * 2021年11月現在。米国での納期実績ベース。日本でも同様に従来の調達に比べて納期は大幅に短縮される)。

2つ目は「APEX Cloud Services」だ。VMware SDDCをベースに主要パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド上で、柔軟なワークロード配置を可能にするもの。ユーザーはこれをコンソールの操作だけで行えるという。

そして3つ目が「APEX Partnership」だ。400以上のクラウドパートナーに加え、コロケーション市場をリードするEquinixとも緊密なパートナーシップを結ぶことで、より効率的なハイブリッドクラウドをシンプルな形で実現できるという。「Equinixのコロケーションは、ハイパースケーラーに近い場所に配置されています。そのためパブリッククラウドとプライベートクラウドの隣接型モデルが実現しやすくなります。さらにEquinixへの支払いも、APEXに統合することが可能です」(Leciejewski氏)。

それではこれらのサービスは、企業ITにどのような変化をもたらすのか。Leciejewski氏はそのメリットを5つ挙げる(図2)。

初期コストの削減やITリソース調達時間の短縮に加え、メンテナンスや最適化も容易になるため、IT部門の負担軽減も可能になる。人材不足に悩む日本企業にとって、DX推進の強力な武器になるはずだ

1つ目は「ITコストのCAPEXモデルからOPEXモデルへのシフト」だ。これによって初期費用が低くなり、意思決定のスピードを高めることができる。

2つ目は「ITインフラの調達時の関係部門との調整作業を簡略化できること」。従来は利用部門が新規サービスなどのためのITインフラを調達する場合、社内のIT部門や外部の業者との度重なる打ち合わせや調整が必要だった。これに対してAPEXでは、コンソール上で何回かクリックするだけで、簡単に必要なITインフラを確保できる。

3つ目は「リソース利用開始までの時間を短縮できること」。従来はりん議を上げて社内調整を行い、機器を調達して設定が完了するまで、数週間から数カ月はかかっていた。しかしAPEXなら前述のように、最短14日間で必要なリソースを利用可能となる。またそれを拡張する場合も最短5日以内で完了できるという( * 米国での納期実績ベース。日本でも同様に従来の調達に比べて納期は大幅に短縮される)。

4つ目は「メンテナンスの負荷軽減」だ。APEXでは機器の管理をデル・テクノロジーズがすべて担当するため、IT部門の負荷が軽減する。その結果、DXなどのより戦略的な領域に、人的リソースを投入しやすくなるわけだ。

そして5つ目は「最適化が容易になること」。ITリソースの最適な利用を行うには、利用状況の継続的な把握を行い、それに基づいてリソースの増減や再配置を実施する必要がある。これはIT部門の大きな負担になっており、そもそもこのような最適化が行えていなかったケースも少なくない。APEXではカスタマーサクセスマネージャーがアサインされ、デル・テクノロジーズが長期的なパートナーとして、最適な価値を提供していくという。

サービス中心型へとシフトし全製品をAPEXの傘の下に

Dell Technologies
APEX Acceleration Team, APJ Leader
Karolis Macionis氏

「デル・テクノロジーズはこれまでも、オンプレミスやプライベートクラウドのサービス化に取り組んできましたが、APEXはこれをより網羅的かつグローバルに展開するもの。そのインパクトは大きなものになるはずです」と語るのは、デル・テクノロジーズ APEX Acceleration TeamでAPJ Leaderを務めるKarolis Macionis氏だ。

また同社がサーバーやストレージ、クライアント端末などのマーケットリーダーである点もAPEXの大きな優位性につながるという。多くの顧客ニーズを吸い上げることが可能である上、幅広いパートナーシップによって業界のエコシステムも構築しやすい立場にあるからだ。

現在はストレージ製品から着手しているが、製品中心型からサービス中心型へのシフトは今後、ほかの製品へも波及していく計画だ。

「最終的に目指すのはすべての製品がAPEXの傘の下に入る世界です。オンプレミスやプライベートクラウドでも、パブリッククラウドと同じように“使った分だけ支払う”のが当たり前の世界にしていく。これがデル・テクノロジーズのビジョンなのです」(Macionis氏)。

デル・テクノロジーズ株式会社
APEXビジネスデベロップメントマネージャー
木村 紳也 氏

日本国内でも既に、「APEX Console」と「APEX Data Storage Services」を提供。デル・テクノロジーズ APEX Acceleration Teamで日本市場を担当する木村 紳也 氏によれば、そのほかのサービスも順次提供を開始していくという。「『APEX Cloud Services』は来年前半予定、Equinixとのパートナーシップに基づくコロケーションサービスも同じころに提供できると考えています」。

「また日本国内における支援体制も着々と整備しつつあります。特にその中核となるカスタマーサクセスマネージャーには、日本の文化やオペレーションを深く理解した人材を投入します。これにより、スムーズかつ最大限にサービス化のメリットを享受できるようにしていきたいと考えています」(木村氏)。

APEXが浸透していけば、オンプレミスシステムのあり方は大きく進化する。その結果、ハイブリッドクラウドの運用はよりシンプルになり、俊敏性も飛躍的に高まっていく。企業ITの未来を見通していく上で、APEXは重要な選択肢の1つになるだろう。

Column:調査結果

日本でも高まるオンプレミスのサービス化への期待

本文にもあるように、オンプレミスのサービス化やサブスクリプション化へのニーズの高まりは、世界的な潮流となりつつある。もちろん日本でも、これらへの期待が高まっている。それを明確に示しているのが、デル・テクノロジーズが日本国内で2021年9月に実施したアンケート調査の結果だ(日経クロステックActive読者を対象とした「ITシステムのアズ・ア・サービス化に関する実態調査」, 日経BP, 日経クロステックActiveリサーチSpecial, 2021年9月~11月実施)。

この調査結果ではITインフラの“as a Service化”のメリットとして「DXプロジェクト推進のスピードアップ」「ITシステム運用の簡素化」「ITにかかわる作業の自動化・効率化」「運用プロセスの改善」を挙げる数多くの回答があった(図1)。またサブスクリプション化のメリットとしては、多くの回答者が「イニシャルコストの軽減」「ビジネスニーズに合わせてインフラを必要なときに必要なだけ調達できる」「ハードウエア、ソフトウエア、サービス、サポートの標準化」などを挙げている(図2)。

ここから分かるのは、サービス化やサブスクリプション化がもたらすメリットは、かなり広い領域に波及すると期待されている点だ。実際にこれらが一般化していけば、現時点ではみえてこないメリットも顕在化することになるだろう。

調査手法:インターネット調査
調査対象:日経クロステックActive読者
調査期間:2021年9月14日~11月2日
有効回答:399件

日経BP社の許可により、2021年11月24日~2021年12月21日掲載の日経xTECH Specialを再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/21/delltechnologies1124/

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