製造業向けワークステーション ワークステーション需要高まる国内製造業 生成AI対応モデルや96コアCPUも

製造業においてワークステーションの需要が高まっている。CADやCAEを用いる設計開発部門だけでなく、スマート化が進む工場やAI活用の場面で利用される機会が増えているのだ。この需要に応えるべく「Dell Precision」ブランドで充実したラインアップを展開しているのがデル・テクノロジーズだ。

この20年ほどの間、国内の製造業はグローバル化の波に乗り、設計開発部門を国内に残しつつも製造部門は海外に移転する傾向にあった。しかしこの流れが大きく変わりつつある。地政学的な問題や為替変動の影響などもあり、「モノづくり」の国内回帰が進んでいるのだ。半導体産業では、熊本や北海道の工場をはじめとする大規模な国内投資が相次いでいる。

なぜ国内製造業の間でワークステーションのニーズが拡大しているのか

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト 部長の中島章氏

モノづくりの国内回帰が進む中、以前にも増してニーズが拡大しているのがワークステーションだ。

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト 部長の中島章氏は「AI(人工知能)技術の急速な進展などにより、業務を行うためのコンピュータの計算能力がさらに重要になっています。強力なGPUを搭載したワークステーションはAI活用に欠かせないことから、設計開発、工場をはじめモノづくりに関わる全ての場面でニーズが高まっているのです」と語る。

医療機器では診断の分野でAIの導入が広がっており、GPUを搭載したワークステーションが利用されている。工場の生産ラインでも、ビジョンAIによる外観検査をさらに高速化するためにワークステーションの導入が検討されている。

CADやCAEを利用する設計開発部門におけるワークステーションのニーズは依然として高く、国内でもその需要は安定している。CADベンダーの多くがクラウドシフトを積極的に発表しているものの、高度化するCADの実作業をクライアント端末で行うためには高性能のCPUを搭載するワークステーションが手元にあることが不可欠だからだ。

充実したラインアップを展開する「Dell Precision」ブランド

国内製造業においてさまざまな用途でワークステーションの需要が高まりを見せる中、デル・テクノロジーズは充実したラインアップの製品群を「Dell Precision」ブランドで展開している。

Dell Precisionは、エントリーモデルの「3000シリーズ」、高性能モデルの「5000シリーズ」、ハイエンドモデルの「7000シリーズ」の3つに分かれている。形状別では、タワー型/ラック型ワークステーションが7機種、モバイルワークステーションが7機種となっている。

デル・テクノロジーズが「Dell Precision」ブランドで展開するワークステーションのラインアップ 提供:デル・テクノロジーズ

国内製造業で特に需要が多いタワー型/ラック型は、3000シリーズで3機種、5000シリーズ1機種、7000シリーズで3機種。3000シリーズは、省スペースデスクトップ筐体として知られるSFFモデルの「Dell Precision 3460」、SFFよりも小型の「Dell Precision 3260」、NVIDIAのGPUボード「RTX 6000 Ada」に対応するエントリーミニタワー「Dell Precision 3660 Tower」がある。

国内製造業の高性能への要求を満たす4モデル

国内製造業の高性能への要求を満たすのが、タワー型の「Dell Precision 5860 Tower」「Dell Precision 7875 Tower」「Dell Precision 7960 Tower」とラック型の「Dell Precision 7960 Rack」だ。

高性能への要求を満たす「Dell Precision」ブランドのタワー型/ラック型の4機種 提供:デル・テクノロジーズ

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネスディベロップメント事業部 クライアントテクノロジストマネージャーの川口剛史氏

Dell Precision 5860 Towerは「インテル Xeon W-2400プロセッサー」を搭載しており、最大2TBのメモリと2枚までGPUカードを搭載可能な高性能モデルだ。Dell Precision 7875 Towerはデル・テクノロジーズのワークステーションで唯一AMD製プロセッサー「AMD Ryzen Threadripper Pro 7000WXシリーズ」を搭載した機種で、最大96コアまで拡張可能だ。メモリを最大2TB、GPUカードを2枚まで搭載可能なのはDell Precision 5860 Towerと同じだが、コンシューマー向けGPUカードのトリプルハイト製品にも対応している点が異なる。

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネスディベロップメント事業部 クライアントテクノロジストマネージャーの川口剛史氏は「GPUの性能向上に合わせたトリプルハイト化の流れを受け、Dell Precision 7875 Towerは500WクラスのGPUカードも搭載できる筐体を用意しました。『NVIDIA A800』にも対応予定であり、今後もGPUカードの新製品には順次対応する予定です」と述べる。

Dell Precisionブランドの中でもフラグシップ的な位置付けとなるのがDell Precision 7960 Towerだ。最大56コアの「インテル Xeon W-3400プロセッサー」を搭載することでPCIe Gen 5.0の最大レーン数が112本となり、これまで最大3枚だったGPUカードの搭載数を4枚まで拡張できるようになった。処理負荷が大きい生成AIもスムーズに利用できる他、解析やシミュレーションといったより高度なエンジニアリングに対応する。

デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト マネージャー ワークステーション製品担当の若宮明日香氏

Dell Precision 5860 TowerやDell Precision 7875 Tower、Dell Precision 7960 TowerはCPUやGPUを中心に高性能化が著しい。そこで必要になるのが最適な冷却システムだ。Dell Precision 5860 TowerとDell Precision 7875 Towerは、筐体内を「電源ユニット」「CPUとメインメモリ」「GPUカード」の3室に分けて効率的に冷却するシステムを新たに採用した。Dell Precision 7960 Towerも、GPUカードの搭載数を最大4枚に拡大したことに合わせて最適化した冷却システムを採用している。デル・テクノロジーズ クライアント・ソリューションズ統括本部 アウトサイドスペシャリスト マネージャー ワークステーション製品担当の若宮明日香氏は、「高性能化に伴ってDell Precisionは冷却機能の強化も図っています」と説明する。

3つのエリアに分けるDell Precision 5860 Towerの冷却システム 提供:デル・テクノロジーズ

Dell Precision 7960 Towerと同じフラグシップモデルでラックマウントに対応するのがDell Precision 7960 Rackだ。2Uサイズのラック型筐体に「第4世代 インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー」を搭載し、2基構成で112コアまで拡張できる。サーバライクな利用を想定しており、光ファイバーチャネルネットワークによる接続などネットワーク機能が優れている。「CAEやレンダリングのサーバとしての利用に加え、エンジニアのリモートワークにも活用されています」(若宮氏)

これら4機種は10Gbpsイーサネットポートを搭載(タワー製品3機種は標準、Dell Precision 7960 Rackはオプション)するとともに、RAID機能も従来の0と1に加えて冗長性を担保する5(分散パリティー)にも対応するなど、基本機能の充実も図られている。

ワークステーションの国内年間出荷台数でトップを獲得

充実したラインアップを展開するデル・テクノロジーズのワークステーションへの評価は、国内市場のシェアにも表れ始めている。2023年の国内ワークステーション年間出荷台数でついにトップを獲得したのだ(出典:IDC Worldwide Quarterly Tracker 2023 Q1 – 2023 Q4 Share by Company)。

中島氏は「グローバルでは25四半期連続でトップシェアを続けてきたものの、国内ではなかなか年間でのトップシェアを取れませんでした。約10年前の2012年末時点では競合企業に大きく差をつけられていたのですが、そこからデスクトップの省スペースモデルやモバイルワークステーションなどのラインアップを拡充してシェアを高めることができました。コロナ禍では国内でモバイルワークステーションの需要が高まりましたが、そうした需要の変化にも的確に対応してきたつもりです。そして現在、グローバルと国内ともにトップシェアであることは、部材調達を安定的に行って製品を供給している証左ともなり、当社のワークステーションを安心して選んでいただける理由にもなるのではないかと思います」と強調する。

国内トップシェアを獲得できた背景には製品ラインアップの拡充以外の施策も存在している。ワークステーションにフォーカスしたスペシャリストチームを10年前に立ち上げ、アカウント営業が的確に提案できるように支援する体制を整えた。顧客や市場からのメッセージにも耳を傾けて、ソリューションパートナーとの密な連携を強化して主要なソフトウェアメーカーとのコラボレーションを推進してきた。これらの積み重ねの結果が今回の国内トップシェア獲得につながっているのだ。

「ワークステーションといえばDell Precision」と言われるように

デル・テクノロジーズは、今後もDell Precisionブランドの展開を通じて国内製造業がワークステーションに求めるニーズに対応していく。スペシャリストチームに所属する3氏は以下のように意気込みを語る。

「トップシェアを継続できるよう、引き続きパートナーとの力強いタッグの下でまい進します」(川口氏)

「これまでもワークステーションを利用されるお客さまにさまざまな情報を提供してきましたが、今後はソリューションパートナーとの連携をより強化しつつ、新たなパートナーとの協業も視野に入れて情報提供のよりいっそうの強化にも注力します。採用していただくための安心材料をお客さまにお届けすることで、いつか世の中から『ワークステーションといえばDell Precision』と言われるようになりたいですね」(若宮氏)

「当社にはワークステーションに特化したスペシャリストがそろっています。その支援の下、お客さまそれぞれの課題に最適解を提供できるサポートと提案の体制のさらなる強化を図っていきます」(中島氏)

左から、デル・テクノロジーズの中島章氏、若宮明日香氏、川口剛史氏。顧客への適切な提案とパートナーとの連携を通じて「Dell Precision」ブランドの展開をさらに拡大していく

この記事は MONOist(https://monoist.itmedia.co.jp/)に2024年3月に掲載されたコンテンツを転載したものです。
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2403/15/news009.html

<前の記事へ   次の記事へ>

About the Author: Dell Technologies