サービス型ストレージに新たな選択肢 顧客の声から生まれた「新オプション」とは?

サービス型でシステムインフラを提供するAPEX。続々と新サービスを投入しているが、高い注目を集めているサービスの1つが、「APEX Data Storage Services(ADSS)」だ。市場投入が先行した米国では、既に数多くの企業・組織がこれを採用しており、2022年7月から提供が始まった日本でもその動きは加速しつつある。そのADSSに新たなオプションとして「カスタマーマネージド」が追加された。ここではADSSを改めて振り返るとともにそのオプションによるメリットについて紹介したい。

「ユーザーが自ら管理を行える」選択肢を追加

デル・テクノロジーズ株式会社
DCWソリューション本部
アドバイザリーシステムズエンジニア
平原 一雄氏

顧客のオンプレミスシステムに、柔軟で拡張性の高いストレージリソースを提供するサービス型ストレージ「APEX Data Storage Services(以下、ADSS)」。先行して提供が開始された米国では数々の企業が導入を進めており、日本でも2022年7月に市場投入されたことで、大きな注目を集めている。

その最大のメリットは、オンプレミスでもパブリッククラウドと同じように、ストレージリソースをオンデマンドかつ月額料金で利用できる点にある。これによってオーバープロビジョニング(過剰なリソース確保)を回避しやすくなり、キャパシティプランニング(最適なシステム構成に向けた計画)やプロビジョニング(リソースの事前準備)も容易になる上、ストレージコストを投資から費用に変えることができるのだ。デル・テクノロジーズの資料によれば、最大45%ものストレージコストを削減でき、プランニングとプロビジョニングの時間を最大86%短縮できるという。

またストレージインフラの運用を全面的にデル・テクノロジーズに任せられることも、メリットの1つだといえるだろう。インフラ系エンジニアの確保が難しい企業や組織の場合には、このメリットに着目するケースも多いようだ。

その一方で、オンプレミスのリソースは自社で運用自由度を最大限確保したい、というニーズを持つ企業も決して少なくない。このような企業・組織向けに、今回新たに追加されたのが、「カスタマーマネージド(顧客が自ら管理を行う)」というオプションである。

「デル・テクノロジーズではサービス型でシステムインフラを提供するAPEXですが、APEXの企画・提供においては、お客様やパートナー様と密接に話をしながら、その内容を改善し続けています」と語るのは、デル・テクノロジーズの平原 一雄氏。今回追加されたオプションも、米国での先行ユーザーからのニーズに応えるためにリリースされたものだという。「オンプレミスのストレージリソースをオンデマンド型で利用、インフラの運用負担も軽減でき、そのコストを投資ではなく費用として処理できるADSSは、先行投入した米国で非常に好調です。一方で、自分たちの運用管理プロセスの中でADSSを活用したいという要望も数多く寄せられていました。これに対応するため追加したのが、このカスタマーマネージドオプションなのです」

「デルマネージド」と「カスタマーマネージド」はどこが違うのか

カスタマーマネージドは、顧客が使うAPEX ConsoleのADSS初回オーダー項目に「管理オプション」として追加される。これは図1のように、「デル・テクノロジーズによるインフラ管理」か「お客様によるインフラ管理」かを選択できるというもの。ここで後者を選択すれば、カスタマーマネージドでの利用が可能になる。

「管理オプション」で「お客様によるインフラ管理」を選択することで、「デルマネージド」から「カスタマーマネージド」に切り替えることができる

それでは従来の「デルマネージド(デル・テクノロジーズによるインフラのマネージ)」と、どこが異なるのだろうか。「ストレージリソースを月額料金で利用できることや、オンデマンドで容量を増減できること、APEX Consoleから調達状況や利用状況のチェック、プロビジョニングできる点は、デルマネージドと変わりません。違うのは大きく2点あります」と平原氏は語る。

1点目は、プロダクトベースのサービスとして提供される範囲だ。デルマネージドではストレージのクラスターノードと拡張シェルフに加え、ToR(Top of Rack)スイッチ、管理用スイッチ、管理用サーバー、ラックマウントPDU(Power Distribution Unit)などマネージドサービスに必要な機器も一緒に提供・設置される。その目的は「アウトカム(成果)ベースのサービスとしての提供とアップタイムを保証する」ことにある。これに対してカスタマーマネージドでは原則として、ストレージのクラスターノードと拡張シェルフのみを提供・設置。ネットワークスイッチや管理サーバー、ラックマウントPDUは、顧客側で用意することが前提となる(図2)。

デルマネージドではストレージに加えてスイッチ類や管理用サーバーなどが一緒に提供されるのに対し、カスタマーマネージドではストレージ製品のみが提供される。そのため、カスタマーマネージドの顧客は、既に保有しているハードウエアやファシリティを有効活用できることになる

「カスタマーマネージドでは、お客様が既にお持ちのIT資産や運用管理プロセスを最大限活用しながら、ADSSを利用できる形態です。なお、ハードウエア障害の予兆検知や使用容量の計測を行うため、デル・テクノロジーズによるリモート監視は必須となります。そのため管理サーバーに関しては、専用の仮想マシンに当社のSecure Connect Gateway(SCG:ハードウエア障害を検知・通知するゲートウエイ)を導入していただくことと、CloudIQ(ストレージの正常性や利用状況に関するモニタリング、分析の各機能を提供する無償のアプリケーション)への接続をお願いすることになります」(平原氏)

社内のノウハウと人的リソースの有効活用が可能

2点目の違いは、容量増減への対応のプロセスである。図3のうち、上がデルマネージド、下がカスタマーマネージドのイメージだ。

基本的な対応は同様だが、前者は容量追加をデル・テクノロジーズが積極的に行うのに対し、後者では顧客主導型で意思決定することになる

これについて平原氏は次のように説明する。

「ADSSでは最初の契約に基づく基本容量と、それをオーバーした場合のオンデマンド容量の2段構えで、ストレージ容量を使用できるようになっています。基本容量を超過した場合には、オンデマンド容量が自動的に適用され、その超過分が追加課金されるわけです。このオンデマンド容量で使われるバッファリソースですが、デルマネージドでは容量監視の内容にもとづき、デル・テクノロジーズが積極的に追加を実施します。バッファリソースを基本契約に組み込みたい場合には、お客様の好きなタイミングで契約内容を見直せます。これに対してカスタマーマネージドでは、バッファリソースが事前に用意した分を超過すると予測された場合に、デル・テクノロジーズが契約アップなどをアドバイスします。そのためカスタマーマネージドの方が、契約見直しのタイミングが早めに来る傾向があります」

端的にいえば、容量追加のタイミングがデル・テクノロジーズ側ではなく、顧客側に委ねられるということだ。これは顧客側で運用管理を行うという前提から考えれば、当然のことだといえるだろう。もちろん容量追加は、お客様専任のカスタマーサクセスマネージャとの連携、APEX Consoleからのセルフサービスオーダーによって、デルマネージドと同様にスムーズかつ柔軟に行える。

なお障害の予兆検知や使用容量の監視、予測などは、顧客側だけではなくデル・テクノロジーズ側でも実施。ハードウエア更改の実施や、その際のデータ消去・ハードウエアの処分も、デルマネージドと同様にADSSの価値はカスタマーマネージドオプションでも享受可能である(図4)。

このようなオプションがあれば、社内にオンプレミスの運用管理担当者が在籍している企業・組織や顧客のインフラの運用管理を行っている企業でも、ADSSを採用しやすくなる。

なお現在(2022年10月時点)、デル・テクノロジーズではADSSに関して、90日間の「マネーバックプログラム」を用意している。これはデルマネージドとカスタマーマネージドの両方に適用される。「ADSSを導入してご満足いただけなかった場合には、初回契約時から90日間は理由を問わずに全額返金させていただきます。ぜひこのプログラムをご活用いただき、ADSSのシンプルさ、俊敏性、コントロール性を体感していただきたいと考えています」と平原氏は語った。

日経BP社の許可により、2022年10月25日~ 2022年11月21日掲載 の 日経 xTECH Special を再構成したものです。
https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/22/delltechnologies1028_02/

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